
地球外知的生命体と人類の接触を描いたカール・セーガンのベストセラーをロバート・ゼメキスが映画化した、当世流行りの空虚なSFX作品とはまったく方向性を異にした骨太なSFドラマ。
幼い頃から宇宙に興味を抱き続け、今では電波天文学者となったエリー(J・フォスター)は宇宙からの電波を基に地球外知的生命体の存在を研究している。だが上司のドラムリン(T・スケリット)が予算を削減し、エリーは大富豪ハデン(J・ハート)に協力を求める。そんなある夜、未知の電波をキャッチしたエリーたち研究グループは、それがヴェガ星からのものだと突き止める。その電波には地球上の映像と謎の設計図が納められており、事ここに至って研究は合衆国政府の手にゆだねられる事となった。ハデンの助力もあって謎の設計図はどうやらヴェガ星への輸送機関である事が判明。急ピッチでその基地が建造されパイロットが選考される事になった。選考委員の中にはかつてエリーと一夜を共にした宗教学者パーマー(M・マコノヒー)の姿もあった。だが信仰心に浅いとの理由でエリーは降ろされ、パイロットにはドラムリンが選ばれたのだ。だがその記念すべき出発の日、科学を否定する狂信的テロリストによってヴェガへの発進基地は無残にも破壊されてしまう……。
もしも地球外知的生命体とのコンタクトが可能になった時、人は、政治は、メディアはどう反応するのか。そんなシミュレーションを徹底的に行ったディティールにまず圧倒される。だがこの作品が感銘深いのは、自分の存在を問いかける主人公が懸命に目標に向かって突き進む姿なのだ。母を父を幼くして失った少女が、神を信じることなく成長し、遂に地球外の存在と触れ合った時、どう変わったのか。何も無神論者が宗教家に転ずるという物語ではない(多分にそう受け止められそうな描写になってはいるが)。かつて「未知との遭遇」で繰り広げられたファースト・コンタクトはまるでパーティのような社交的雰囲気だったが、本作での想像を絶するこの接触は自分自身を見つめ直す事に他ならなかった。外宇宙と内宇宙の融和。それは地球から遥か宇宙の涯てまでズームバックし続けるカメラがやがて少女時代の主人公の瞳に繋がるという印象的なファースト・カットでも象徴的に語られている。「E.T.」のような御伽噺でも、「インデペンデンス・デイ」の法螺話でもなく、真っ向から地球外知的生命体とのコンタクトをテーマとしているため、かの「2001年宇宙の旅」とも比較されるが、ある意味難解さで身を守ろうとしたあの作品に比べると実に良心的な作品と言えるだろう。肝心の“コンタクト”のシーンの処理も、考えうる範囲ではベストの選択だ。
セーガンの長編を大胆に、それでいて芯は曲げていない脚色、自在に動き、時として信じられないような画を見せる撮影、それらを含めて2時間半もの長尺を全く飽きさせないゼメキスの手腕。今のハリウッド映画のもっとも素晴らしい見本のひとつと言っても過言ではない。J・フォスターの達者ぶりに関しては今さら何も語る事はなかろう。彼女が主演だったというだけで、この作品は何倍もの輝きを得ている。