
舞台は現代のロサンジェルス。23歳のロイは一見おとなしそうな好青年だが、実はケチな詐欺師。14歳でロイを生んだリリーは、母親らしいことは全くしてやらず、ロイは8年前に家を飛び出したままだ。競馬のノミ屋で働くリリーはアメリカ中の競馬場を転々としている。ロイの恋人マイラは、色気仕掛けを得意とする、これも詐欺師。年の差がそれ程ないリリーとロイは、親子でありながら一歩間違えれば男と女の関係になりかねない。物語は、この母と息子と恋人の危ない三角関係を軸に、“グリフターズ”の生き残りをかけた騙しあいが展開してゆく。環境と人間関係が引き起こす心理状態の変化にスポットを当て、それらをハードボイルド・タッチで描いた快作。実に、映画的な画調、卓越した演出力、そして映画全編に渡る冷めたアイロニカルな切り口。これは文句なしの娯楽作品であると同時に、人間の奥底にひそむ感情を鋭く暴いた第一級の心理劇である。