
活字の存在しない未来の管理社会を描いたレイ・ブラッドベリの小説を映画化。主人公モンターグは禁止されている書物の捜索と焼却にあたる有能な消防士だったが、クラリスという女性と知り合った事から本について興味を持ち始める。やがて読書の虜となった彼の前には妻の裏切りと同僚の追跡が待っていた……。トリュフォー初の英語圏作品であった事も含め製作はトラブル続き(この辺りはトリュフォーの名著『ある映画の物語』に詳しい)だったが、仕上がった作品は高潔で機知に富んだ秀作となっている。雪降り頻る中の詩的なエンディングを始め、忘れ難いシーンに彩られており、モンターグの妻リンダとクラリスの二役を演じたJ・クリスティの魅力も手伝って、ブラッドベリ作品の映像化作品の中ではベストの出来と断言してもよいだろう。B・ハーマンのスコアはいつもながら素晴らしい。